近年、歯の疾患が全身疾患の原因になり得るとの指摘がさかんに叫ばれるようになっています。
代表的なものは、歯周病が体に引き起こす悪影響です。
歯周病は、口腔内の細菌の感染によって起こりますが、この細菌が体のあちこちに対しても影響を
与えます。
歯周病は、次の疾患を引き起こすと言われています。
■心臓疾患
狭心症、心筋梗塞などの原因となります。
理由としては、
1. 歯周病菌の毒素に対抗して免疫細胞が働き、それが作り出す物質が血管そのものを変性させる
2. ある種の歯周病菌が持っている因子が直接心臓冠動脈血管に血栓を形成する
などがあります。
■肺炎・気管支炎
特に高齢者の場合、唾液や食物を飲み込む時に誤って気道の方へ行くことがあります。その際、口腔内の細菌が
肺の方へ入り肺炎を引き起こす場合があります。
■糖尿病
歯周病は細菌感染症です。細菌が体に侵入してくると生体防御反応が起こり、炎症になります。
その際に作られるサイトカインという物質の中には、インスリンの働きを阻害するものがあり、
その結果として血糖値が悪化し、ひいては糖尿病を悪化させます。
■早産
妊娠している場合、歯周病によって作り出された物質が胎盤を通過すると、早産するリスクが高くなります。
また、歯周病菌が羊水内に入ると、低出生体重児が産まれる確立が飛躍的に高くなると言われています。
これ以外にも、つい最近のニュースですが、歯周病菌が増殖の過程で大量に作り出す“酪酸”が、潜伏中のエイズウイルス(HIV)を活性化させ、エイズ発症のリスクが高まるとの指摘もありました。
歯周病以外にも、歯がなくなったり噛み合わせが悪いと様々な影響が体に出るかもしれません。
■多数の歯がなくなると、咬合力が減るため握力が低下したり背骨が曲がってくることもあります。 また顔の表情筋にも影響がでます。表情が出にくくなり、筋肉の緊張も減り、それが基で 自律神経やホルモンバランスにも影響が出る可能性があります。
■お子さんは、正常なかみ合わせは脳への刺激となり、前頭葉の発達につながります。かみ合わせが 悪いと脳の発達にも影響が出る恐れがあります。
このように、歯の疾患は体の様々な疾患のもとになる可能性があります。たかが歯の調子が悪いだけ、と 思っていると、知らぬ間に他の病気を引き起こしてしまうかもしれません。歯の調子が悪い時は早目に 歯科医にかかることをお勧めします。